熱分析は試料の物理的または化学的な熱変化をマクロに把握する手法として幅広い分野で用いられています.しかし,具体的にどのようなことが起きているのかといったミクロな情報を得るためには,他の手法と組み合わせた複合測定を行うことが必要となります.この複合分析の一手法が,示差熱天秤(TG-DTA)と質量分析法(MS)を組み合わせた示差熱天秤- 質量分析(TG-DTA-MS)法で,リガクではTG-DTA-MS 法の装置としてスキマーインターフェースを保有するThermoMass Photo(示差熱天秤- 光イオン化質量分析測定装置)を販売しております.
TG-DTA-MSは,TG-DTAの試料部より発生する気体をMSに精度良く導入するために,気体輸送のためのインターフェースが必要となります.代表的なインターフェースとして,キャピラリー型とスキマー型の二種類のインターフェースがあります.従来のキャピラリー型は両装置間を1 ~ 2 m の長さの細管(キャピラリー)で接続し,一定の温度で加熱する方式です.この方式は,キャピラリーと両装置間との接続部の温度を均一に加熱する必要があるのですが,経路に長い上,接続部が複雑になるためコールドポイントが発生し,高沸点ガスが滞留しやすくなります.一方スキマー型は,ジェットセパレーター原理に基づく差動排気部を熱分析装置の電気炉内部に組み込んだ方式です.この方式は,大気圧の試料部から発生したガスをおよそ160 mmという短い距離で真空雰囲気にあるMSチャンバーに導入する事が可能な構造なのですが,MS側の接続部は加熱が難しい構造な為,経路は短いですがキャピラリー方式と同じようにコールドポイントが存在してしまいます.今回,リガクではThermo Mass Photo の新しいインターフェースとして,コールドポイントが無いキャピラリーインターフェースの開発に成功し,高沸点のガスの検出が今まで以上に幅広くなりました.