新製品紹介

「タンパク質位相決定がラボ機で可能」
タンパク質用高分解能X線回折装置を開発

2004年10月13日

これまで放射光施設で行われていた蛋白質の位相決定から構造解析までの一連の測定が、実験室レベルで初めて可能としたラボ用のタンパク質構造解析用高分解能X線回折装置 R-AXIS HR(アール アクシス エイチアール)を開発しました。
これはCrKα波長による、タンパク質に内在する硫黄原子の異常分散シグナルが、従来使用されているCuKαの波長に比べ約2倍という特性を応用することで、ラボ機によるタンパク質構造解析の最重要問題である位相決定を可能としたものです。
これまでも方法論としては、解明されていましたが、通常のX線源にCr対陰極を用いX線を発生させると、著しく減衰することや、広角度の測定が必要で、実験室での実用域には到達していませんでした。そのため強力なビームラインをもつ放射光施設が必要とされていました。
今回、弊社のみが保有する超高輝度回転対陰極型X線源とX線集光の要素技術である人工多層膜ミラー光学系により、約10倍もの高輝度化をはかりました。さらに新開発のデータ収集機構として、2枚の湾曲させた2次元検出器(イメージングプレート=IP)を回折データの露光・読み取りに使用することにより、従来比2倍の迅速データ収集を可能としました。放射光施設使用前の予備実験機としてご活用いただけます。

タンパク質(生体高分子)のX線構造解析において、位相決定は、構造解析ソフトウェアが発達した現在でも、未だ重要な柱のひとつといわれています。
従来は、生化学的な手法によりサンプルに原子・Se(セレン)を導入し、複数の波長で測定を行うMAD法(多波長異常分散法)や、タンパク質結晶を重原子溶液に浸し、重原子誘導体を作成するMIR法(多重同形置換法)が用いられてきました。MAD法は生化学的に蛋白質を修飾しなければならない上、放射光施設を必要とします。また、MIR法は適切な誘導体を得られるまで、根気よく重原子の導入を繰り返さなければならなりません。
近年、これらを不要とするSAD法(単波長異常分散法)と呼ばれ、実験室レベルで、単一波長測定のみで新規タンパク質の構造解析を可能とする位相決定法が注目されてきました。これはタンパク質の構成要素として必ず含まれる硫黄原子の位置を、異常分散のシグナルから決定して初期位相を得るというもので、この方法は、強力な実験室系X線源と高精度の検出器が必須条件となります。
弊社では、今回、新たに開発した露光・読み取り機構に2枚の湾曲型IP(富士写真フイルム社製)を搭載し、保有する高輝度X線源、高効率な光学系との構成により、ラボ機においてSAD法による位相決定を可能としたものです。

主な特長

  • Cr対陰極の採用により、分解能が2.3Åから1.8Åまで向上。
  • 湾曲型IP検出器の採用により、結晶から検出器までの距離が一様であるため正確な強度収集が可能。
  • X線源とサンプル間のX線減衰を防ぐため、Heパスを搭載。作業性を考慮したパス自動退避機構を採用。
  • IPを2枚搭載しているので、回折データの露光・読み取りが同時に行われ、効率的な測定が可能。
  • 新開発の読みり取ヘッドで、従来の約1.7倍の3000行(300mm)/分の読み取りを実現。
  • 波長の長いCrKα線を用いていることで、600Åというウイルス等の巨大タンパク質の構造解析も可能。
  • 限定範囲測定の固定ゴニオメータや、広範囲測定用の1/4カイサークルゴニオメータなど、測定目的に合わせたゴニオメータの搭載が可能。
  • Mo対陰極や他の光学系に変更することで、低分子用構造解析装置としても使用可能。

装置の外観
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